ケアーからキュアーへ | 日本不整脈外科研究会

虚血性心疾患とは?

心臓の役割は、血管という管を通して全身に血液を送ることです。心臓から血管を通して全身に血液を送ることができるため、脳を含めた各臓器に血液から酸素が行き届き、私達は生きることができるのです。このため私たちの心臓は生まれてから死ぬまでひとときも休むことができません。右冠動脈 左冠動脈
そんな心臓が休まずに働き続けるためには、膨大な量の血液を必要としています。この心臓自体(心筋)に血液を送って、酸素を届ける血管は「冠動脈」と呼ばれ、この冠動脈は心臓を大きく3領域に分けたそれぞれの場所を走っています(実際は左右2本の冠動脈ですが、左の冠動脈はすぐに2本に分かれるので3領域となります)。
冠動脈が動脈硬化等により狭くなったり、詰まったりすることで心筋に十分な血液を送ること出来なくなることがあります。これを虚血性心疾患と呼び、具体的には“狭心症”や“心筋梗塞”と呼ばれる病気です。

虚血性心疾患になるとどうなる?

心臓は、十分な血液を貰えなくなったからといって休む訳にはいきません。冠動脈から心筋へ届けられる血液の量が不足した時に私達は“胸の痛み”を感じます。(但し、この感じ方は人によって様々であり、”肩、背中、首、顎などの痛み”で症状を感じる方もいます。)
特に運動中は、心臓はより多くの血液を全身に送り届けようとして強く動くため、心臓自体もより多くの血液を必要とするようになります。つまり、“走ったとき”や“階段を上っているとき”にこれらの症状を感じることが多くなります。こうした状態を“労作性狭心症”と呼びます。
さらに病状が進行すると、少し動いただけで胸が痛くなったり、横になって休んでいても症状が出るようになります。こうした状態を“不安定狭心症”と呼び、大変危険な状態です。
冠動脈が狭くなることで心筋への血液が不足することで、狭心症が引き起こされるのに対し、プラークと言われる冠動脈内にできたコレステロールの塊が破綻して、冠動脈が急に詰まり心筋への血液が完全に途絶えてしまうと“心筋梗塞”と呼ばれる状態になります。胸周囲の痛みや違和感となって体に異変が現れますが、軽い症状しか現れない事もあります。心筋梗塞になると、心筋の壊死(腐ること)が始まるので、一刻を争う非常に危険な状態です。心臓の働きが悪くなり、全身にうまく血液を送り出すことができなくなるだけでなく、時には命に関わる重大な不整脈をきたしたり、心臓が破裂することで突然死に至ることも少なくありません。痛みの部位 心筋梗塞

虚血性心疾患に対する治療

冠動脈の狭くなった部分や詰まってしまった部分を治療する方法は、大きく分けて3つあります。薬物療法(薬を使って治療する方法)とカテーテル治療と手術です。虚血性心疾患に対する治療には客観的な治療指針であるガイドラインが発表されており、それに基づいた治療がなされます。
カテーテル治療のほうが体にかかる負担や苦痛の少ない治療であり、まずはカテーテル治療ができるかどうかを循環器内科で検討する事になります。しかし、冠動脈の状態によってはカテーテル治療が適切でない場合があります。そのような場合には外科手術が必要となります。冠動脈が狭くなったり、詰まったりすることで心臓にうまく血液を届けられない場合に行われる手術が冠動脈バイパス術です。

冠動脈バイパス手術

冠動脈が狭くなって、心筋にうまく血液を届けられない場合に、他の血管でバイパス(迂回路)を作って、ここから心臓に血液を送り届け、心筋に十分な血液を届けられるようにするために開発された手術が冠動脈バイパス手術です。この手術は他の臓器に血液を届けている血管を冠動脈に繋げることによって、十分な量の血液を心筋へ届けられるようにする手術で、バイパスに用いる血管(グラフト)には様々な種類があります。冠動脈バイパス手術心臓や血管の手術を行なう時には、人工心肺装置という特殊な器械を使用して、心臓を止めた状態で行なうことが多いのですが、冠動脈バイパス術は心臓の表面を走行している冠動脈にグラフトを繋ぐ手術であるため、現在では医療器具の発達のおかげで人工心肺装置(ポンプと呼んでいます)を使わずに、心臓を動かせたままの状態で行なうことも出来るようになりました。これを人工心肺非使用心拍動下冠動脈バイパス手術(オフポンプ冠動脈バイパス術)と呼びます。動いている心臓の血管をつなぐ手術となるため、より高い技術が必要となります。心臓を止めることなく手術をすることで体にかかる負担は大幅に軽減する事ができると考えられています。日本人特有の職人気質な繊細な技術のためか、冠動脈バイパス術を受ける方の中で、オフポンプ冠動脈バイパス術を受ける方の割合は日本では約60%と世界平均を大幅に上回っています(欧米では10−20%程度)が、当施設では冠動脈バイパス手術をオフポンプで行うことを基本としており、90%以上の方にオフポンプ冠動脈バイパス手術を行ない、良好な成績を得ています。
さらに冠動脈バイパス術において最も重要であると考えられるグラフトには前述したように様々な血管がありますが、グラフトの選択に対してもこれまでに蓄積されたデータから多くのノウハウを持っており、動脈グラフトを積極的に使用しながら、手術を受けられる方に最も適したデザインで手術を行っています。

また、川崎病の冠動脈病変に対する外科治療にも積極的に取り組んでいます。日本のリーダー的存在として日本中のみならず世界中から治療の依頼を受けて手術を行っており、非常に良好な成績を挙げています。

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